「取り戻す」と「取戻す」はどちらを書く?使い分けと表記ルール

表記・送り仮名

自分で一般的な文章を書くなら、「取り戻す」と書くのが基本です。「取戻す」という表記も実際に使われますが、公用文だから「取戻す」とするわけではありません。

たとえば、

信頼を取り戻す。
データを取り戻す。
元の状態を取り戻す。

のように書きます。

「取戻す」は送り仮名を省いた形として見られますが、普通の文章では「取り戻す」を選ぶと分かりやすいでしょう。

「取り戻す」と「取戻す」の基本ルール

文化庁の「送り仮名の付け方」では、複合語は原則として、構成するそれぞれの語の送り仮名に従って書きます。

この本則に沿うと、

取り戻す

となります。

一方、読み間違えるおそれがない場合には、複合語の送り仮名を一部省くことができるという「許容」もあります。

「取り戻す」が本則に沿った形

「取り戻す」は、

取る+戻す

から成る複合動詞です。

文化庁の通則6では、複合語について、

書き抜く
申し込む
打ち合わせる

など、構成する語の送り仮名に従って書くことを本則としています。

同じ考え方で「取り戻す」と書くのが基本です。

「取戻す」は送り仮名を省いた形

通則6には、読み間違えるおそれがない場合、複合語の途中の送り仮名を省くことができるという許容があります。

そのため、

取戻す

のような表記が使われることもあります。

実際、官公庁関係の資料でも「取戻す」という表記例は確認できます。

ただし、「取戻す」の方が一般的な基本形という意味ではありません。

場面別ではどちらを書く?

一般的な文章・メールでは「取り戻す」

自分で表記を選べる文章では、

取り戻す

を使うのが分かりやすいでしょう。

たとえば、

削除したデータを取り戻す方法を確認します。

失った信用を取り戻す必要があります。

本来の状態を取り戻しました。

のように書けます。

専門的な文書・システムでは「取戻す」が使われることもある

業務システムや専門的な手続では、

取戻す
取戻し

という表記が採用される場合があります。

厚生労働省のシステムマニュアルでも、

届出を取戻す

という表記が実際に使われています。

このように既定の画面名・操作名・用語として「取戻す」が使われている場合は、その表記に合わせます。

公用文ではどちらを書く?

公用文では、一般の送り仮名ルールよりも運用が限定されています。

活用のある語は本則を基本にする

文化庁が示す公用文の送り仮名では、原則として「送り仮名の付け方」の本則によります。

送り仮名を省く運用が特に定められているのは、主に活用のない複合語です。

「取り戻す」は活用する動詞なので、

取り戻す

とするのが基本です。

「取戻し」と「取戻す」は分けて考える

公用文の省略語には、

取戻し

のような名詞形が使われる場合があります。

しかし、

取戻し
取戻す

は同じルールで機械的に扱えるわけではありません。

名詞で送り仮名を省く表記があるからといって、動詞まで必ず省略するとは限らない点に注意します。

表記を決めるときの注意点

「公用文だから取戻す」としない

「取戻す」は実例のある表記ですが、

公用文では「取戻す」が正しい

と覚えるのは適切ではありません。

公用文では活用のある語について本則を基本とするため、「取り戻す」と考えます。

システム上の用語は勝手に直さない

画面に、

届出取戻し
届出を取戻す

と表示されている場合、その操作名を引用するときは表記をそのまま使います。

本文を「取り戻す」にしていても、正式な画面名まで変更する必要はありません。

同じ本文では表記をそろえる

理由なく、

データを取り戻す
情報を取戻す

と混在させると表記揺れに見えます。

自分で書く一般文なら、「取り戻す」に統一すると分かりやすくなります。

迷ったときの判断基準

書く場面表記の目安
普通の文章取り戻す
メール本文取り戻す
Web記事・説明文取り戻す
公用文取り戻す
「取戻す」と定められたシステム用語取戻す
正式名称・画面表示指定表記に従う

迷ったら「取り戻す」と書けばよいでしょう。「取戻す」は送り仮名を省いた表記として使われることがありますが、公用文の基本形だから使う、という関係ではありません。

特にこの語は、前の記事で扱った名詞の「取下げ」「取決め」と違って動詞です。名詞の送り仮名省略ルールをそのまま動詞に当てはめないことがポイントです。

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